2010/10/06

【書評】ソフィーの世界



今年の夏休みに、10冊くらいまとめ買いしたの中の1冊(上下巻)。
存在は知っていたのですがが、子供、それも少女向けのファンタジー小説だと
ばかり思っていたので、これまで決して手に取る事はありませんでした。
きっかけは、最近は、娘が成長したら読んでもらいたいなと思う本も読むように
しているので、その基準で手に取ってみました。

内容は、アルベルトという哲学の先生とソフィーという少女を中心に、ファンタジー
と若干のミステリーを絡ませて、「哲学の歴史」をなぞっていくという構成。
ついつい引き込まれます。

哲学

恥ずかしながらこれまで、哲学に取り組んだことは無かったです。
カント?ソクラテス?難しい事を考えてばかりの昔の人々っていう感じでしたw
ところが!この本のお陰で、ついに禁断のその世界を覗いてしまったなという
実感を確実に得ています。「何を今更言ってるんですが」と突っこまれるかも
しれませんが・・・

とにかく、「お~そうだったのか」の連発。こういうのを知的興奮と言うので
しょうか。

例えば、

ソクラテス→プラトン→アリストテレス

この順番でつながっていることの理解がとても重要だし、プラトンに学んだ
アリストテレスが、何故イデア論を批判し、どうやって理性の重要性に独自の
視点で気付くことができたのか。或いは、デカルトは、プラトンの思想のどこ
をどう超えて、自分の理論をあらたに展開させることができたのか。

そして、

アリストテレス→ロック・ヒューム・バークリといったイギリス経験主義
ソクラテス・プラトン→デカルト・カントらに続く大陸合理主義

へと展開していくのです。
そういった事柄が、哲学初心者でも直感的に理解できる内容になっている事が
この本の有益さでしょうか。
これまでに、人類史上実現されてきた科学技術の発達や、あらゆる発見の数々
も哲学的な思考の貢献がとてもとても重要だったのです。

哲学において、もっとも重要な事は「問いを立てる」ことなのだそうです。
問い=疑問です。疑問を持つこと。これから全ては始まります。現実の生活
やビジネスにおいてもまさに大切な事ですよね。

読み進めていくと、ソクラテスも言っているように、自分が何も知らないんだ
ということに、嫌でも気付かされます。でもそれは、言い換えれば、より多く
を学んでいく為の窓が開かれたことと同じ事。
何歳からでも学び始められるとは思いますが、あ~せめてあと5年早く読んでい
ればなぁと思わせる本です。

もう3度目の復習に入っていますが、読み返すたびに発見があります。そして、
浮んだ疑問についてあれこれ考える作業が知的に楽しいのです。マーキング
だらけで、しかも半身浴時に読んだりしているので、すでにボロボロになって
しまっていますが、既に愛着が出てきています。
膨大な哲学体系の霞のような一部を感じて、そして未開の地へ踏み込む勇気
を喚起させてくれる・・そんな本です。

本書にでてくる哲学者達の著書も、機会を見て読んでいきたいと思っています。
早速こんなの読んでみました。



シェイクスピアのような戯曲以外で、問答形式のような本を初めて読みました。
何事も一度で理解できない自分の頭ですから、何回か読み返してみて、初めてその
重要性や面白さが解ってくるのかなと思っています。これは、途方もない作業に
なりそうです。

最後に、本書にも掲載されている文豪ゲーテの言葉を紹介しておきます。

「3000年を解く術を持たない者は、 闇の中、未熟なままに その日その日
を生きる」

偉大なる(すぎる)諸先輩方に学びましょう。