2015/02/01

古典系読み 004: ゼロの焦点

仕事でフィリピンのマニラに来ている。
今朝は、あまりにも悲惨なニュースとともに始まった1日であった。

先の飛行機事故もそうだけど、海外で仕事をする上でもある種のリスクが顕在化してきているのを微妙に感じる。この状況を、責任ある立場としてどう考え、対処していったら良いのだろうか・・・・

今のところ、社内からはそういった発言は無いようだが、私一人が悶々と考えていても意味がないので何かしら問いかけてゆく必要があるだろう。

いずれにしても、ご本人のご冥福と、ご家族の皆様にお悔やみを申し上げます。

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さて、前回も書いたけど、今は「利己的な遺伝子」を読んでいる。しかし、量的にも理解度的にも自分にはかなり手強い内容ということもあって、なかなか苦戦している。何といってもある一段落すっぽりと何度も読み返さないと何を言っているのか理解出来ない箇所も沢山ある。トホホ、、、

というわけで、箸休め的に手に取った松本清張の「ゼロの焦点」を先に読み終えてしまった。


利己的な・・・のようなサイエンス系ノンフィクションに比べると、小説という形態の読み物は気持ちが良いくらい読みやすい!

して、本書は日本の推理小説の大家である著者の中でも代表作の部類に入る作品らしい。

なのでこの分野では「古典」と評価してもいいだろうと勝手に判断した。

粗筋をネタバレしない程度に纏めるとすれば、見合結婚した男(鵜原健一)が、その後赴任先の金沢から突然失踪する。その謎を妻である禎子が追ううちに、周囲の関係する人物が次々に殺されていき、更に謎が深まってゆくのだ。しかし、徐々に浮かび上がってくる夫のや事件に関係する人々にまつわる過去が解決の糸口となる、といったところか。その過去の地点をゼロと位置付けているのかな。

感想としては、正直にいうとあまり引き込まれなかった。
複雑に伏線を張り巡らせつつ速いテンポでの進行が読み手を引き込ませるものが多い、現代の優れた推理小説群に比べれば、本作品はかなりスローテンポであり、全体としても素朴な構成だなぁと感じた。

まぁ、いわゆる二転三転が無いことも無いが、その死は突然やってきて突然解決されるといった感じで、私の上を事件が冷静に過ぎていってしまう感は否めない・・・

そして、ミステリー小説で特に重要な要素として「次の展開へ移るきっかけをいかにつくるか」だと勝手に理論立てているのだけど、そこをあまりにも偶然に頼りすぎていて、若干の物足りなさ?を感じてしまった。

例えば、禎子が偶然派手な女(後のキーパソン)を駅の人ごみのなかで見かけるとか、偶然入った喫茶店で隣に座っていた男たちの話す内容からある種の"重要な気づき"を得る、、、といった具合だ。

また、絡まった謎を解くのはほぼ一貫して妻の鵜原禎子の心理内での推理によって解決される。この点も微妙だ。

彼女があることを考え始めると、次から次へと核心に近づいていける思考展開力は、単なる主人を亡くした未亡人ではなく、この女性相当の切れ者だ。CSIの分析官になれるって!

そんな彼女が何故凡庸な日々を送っているのか。

或いは、当時はそんな能力がありながらも表に出られない女性達が多かったのだよ、という深遠なメッセージが隠されているのであればそれはそれで深いが、ま、それは考えすぎ。

とはいえ、舞台の背景は終戦後の混乱がまだまだ色濃くのこる昭和30年代。

この時代にこそ起こり得る題材が中心になっている作品であるので、そのあたりの私の認識不足がストーリーに入っていけない要因もあるのかなと思ったり。

ともかく、幾多の推理小説家が読んで影響されてきたであろう松本清張作品だが、個人的には積極的に読んでいきたいと思えるタイプではなさそうだ。


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