2013/02/09

ビジネススクールの戦略


あるビジネススクールでは、企業派遣と自費で学んでいる生徒を分けて別けて教えているクラスもあるらしい。そこに通っている方から聞いた話なので、それはある程度正しい情報だと思われる。

どういうことかというと、前者の生徒は総じて会社から派遣されているという意識がどこかにあるらしく、真剣さに欠ける人が多いのだと。そして後者はやはり自分の金で学びに来ているからか真剣さの度合いがかなり高い、という前提だ。そして、ビジネススクールの特徴として、教授が一方的に教えるのではなく、様々なディスカッションが主体で進行していくから、生徒達の熱量の違いがそのままクラスのクオリティに反映してしまうという考え方らしい。(そのクラスがそういう趣旨のもからだけかもしれないけど)

まぁ、わからないでもないけど実際に経験していないから何とも評価しづらい。ただ、もし自分が企業派遣の生徒だと仮定すれば、ある一定の時間をそこで使うわけだし、なにより自分の仕事に役立つ内容なのだから相当真剣に取り組むだろう。だからそういう基準で強制的にクラス分け別けされるとしたら「えー、あっちのクラスで熱く熱く議論したいよー」と、多分納得がいかないと感じるはずだ。

それはそれとして、なぜスクール側はそういった反発を受けながらもクラス分け別けを実行するのだろうか。少々興味を持ったので考えてみた。

企業派遣生だってスクールの運営上は大切なお客様だ。むしろ毎年定期的に生徒を送り込んでくれる大のお得意さまかもしれない。それをわざわざ「意識の高低」でクラスを分ける別けるなんて、もし企業側が聞いたらどんな反応をするだろうか?

しかし、彼らもビジネススクールだ。おそらくそんな企業や僕のような生徒の反応は想定内だろう。ということはそれ以上のメリットがあると考える他はない。

まず、クラス別けの効果として考えられるのは、冒頭にも述べたような前提に立てば、後者グループの方が前者に比べて発展的な議論の場になり易いというのは普通に想像できる。そして、そのような状況でカリキュラムを終えた生徒は、間違いなく身に付いている度合いが企業派遣グループに比して良い結果を得られそうだ。

一方、もし一緒くたにした場合は、中途半端な議論に終始する可能性が高く、結果として凡庸な成果しか得られないということにもなりかねない。

この点から言えば、全体が凡庸になるのは避けたいので、もし人数が少なかったとしても最高の学びを得た人々を輩出することにフォーカスすべきだ。なぜならそうやって最高の学びを得た生徒らは、卒業後に現実のビジネス世界での活躍が期待できるからだ。

ポイントはここだ。そうなると彼らの優秀さの一因がそのビジネススクールにあるのではないかという評判が彼の周辺のあちこちで立つ事になる。それはスクールにとってとても重要だ。ものすごいPR効果だしブランディングの一因となる。

従って、ビジネススクールの創出すべき価値は「ビジネス界における優秀な卒業生」、ということになる。そういう卒業生を輩出していれば、そういう評判を構築できていさえすれば、スクールの評価は一層高まるものとなり、結果、企業側もその評判を頼りに派遣を続けるという読みがあるのではないだろうか。ハーバードの卒業生は確実に母校に価値をもたらし続けているしね。

というわけで、この「生徒のバックグラウンドによるクラス分け別け」という施策は、価値創出の為には、同等に対応しないこともあるよ、といういわばトレードオフに基づいたものだったのだろうというのが僕の仮説だ。

※「分ける」と「別ける」の違いを今日は意識する記事となった。考え方のベースは、元々同じだったものを"分ける"のか、別々のもものが一緒になってまた"別ける"、のかということらしい。だから今日は"別ける"を採用した次第。

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