2016/11/29

自分文脈を通してみた『トーマス・ルフ / Tomas Ruff (写真家)』

写真家トーマス・ルフに非常に関心を持っている。

といっても、芸術的にというわけではない。

実は、芸術とは何か、について深く考え学んできたタイプの人間ではないので、芸術作品としてどうよ、と問われても答えに窮する。

とはいえ、ずいぶん前に読んだ村上隆の”芸術起業論”のインパクトがめちゃくちゃ強かったこともあって、相当のビジネス的論理が入り込んでいる世界なんだな、というわりと現実的な感覚は持っていたりする。
この本には、アートには歴史的な文脈の理解が必要だし、市場に対するマーケティングの視点も成功のためには重要な要素である、といった趣旨のことが書いてあったように記憶している。

しかし、文脈といえば、そもそも「自分自身」というものがあるではないか。自分文脈とでもいえばいいのかな。自分が生きてきた歴史は自分が一番良く知っている。

むしろそこには他人が学ぶことができない自分だけの文脈が存在している。何を食べ・飲み、読み、経験し、誰と出会ってきたか、、、、それらが年月をかけて蓄積されてベースが出来上がる。そして何かしら影響を受けた作品をそのベースに載せて眺めてみる。そんなところから得られるインスピレーションは、かなりオリジナルなものになるはずだ。

トーマス・ルフでいえば、僕は彼の創作アプローチ方法にそんな自分文脈との接点を見出すことができた。それは、この10年程携わっているストックフォトである。

彼の作品の多くは、世の中にすでに存在している素材(デジタルやネガやプリント)を活用して制作されている。例えば、jpgシリーズ。911激突直後の噴煙が立ち込めるビルの作品などはその最たるもの。

以下の本人のコメントに代表されるアプローチは、まさにストックフォトと通じるものを感じる。
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そして気づきました。
インターネットは膨大なイメージ流通の供給源であるということに。
私が試みているのは、圧縮された画像を、ネット上に流通するイメージの再現/表象として提示することなのです。
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(芸術係数BLOG/トーマス・ルフ「JPEGシリーズと過去の重要な作品について」より引用)


『膨大なイメージ流通の供給源』とPIXTAをダブらせてみたりして、これは強引なこじ付けかもしれないが、勝手にワクワクしてしている。

超有名アーティストが写真をこのように捉えていることは、ストックフォトの可能性を大いに感じさせてくれる道筋の一つになっている。

余談だが、トーマス・ルフというアーティストは、そういった既存のアートシーンのコンテクストを疑い、意識的に逸脱して創る世界観が特徴的なのだと一般的には言われているようだ。

NewsPicks↓↓の記事は解説として的を得ていそう。

「トーマス・ルフ」はビジネスパーソンの一般教養だ」

ともかく、これからも目が話せないアーティストであること間違いなし。

※トーマス・ルフの作品をもっと見てみたい方は僕のPinterestも覗いてみてください。随時pinしてます。





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