2010/07/25

【書評】 名人 川端 康成



なんとなく読んでみました。
本因坊秀哉名人の数ヶ月に渡った引退碁の様子をルポ的に綴った作品。
もちろん勝負に対する執念や、何手も先まで考えて1つの手を指す囲碁の深さ
などには勉強させられましたが、僕としては、川端康成が名人の死顔を写した
ことを語る冒頭のシーンから始まり、所々挿入されるレンズやカメラに造詣の
ある氏の写真へのスタンス。更に、作中には木村伊兵衛も登場するなど
写真との繋がりの多い作品であることに興味を持ちました。

対局の合間に木村伊兵衛が登場するシーンはこんな一節です。

「木村伊兵衛が海外に紹介するとい写真を撮るということで、両棋士は対局の
姿をさせられた。」

・・・実はこれだけなのですが、何か木村伊兵衛が、取材としてやってきた的な、
いかにも「そんなに大したことじゃないんだよ」という扱いに、むしろ引き寄せられ
ました。偉大な写真家も、相当フットワークが軽かったのだろうと想像したりして。

一体どんな作品で、海外の何に紹介したのだろう?検索してみても今のところ
ストライクな結果は得られていません。どなたかご存じないですか。

木村伊兵衛は当時の文士のポートレートを多く撮影していました。
もちろん川端氏のことも撮影していました。
ネットなどないこの時代は、優れた人々が今よりも濃密にリアルでつながる
ことによって、お互いものすごい刺激を受けあっていたのだろうなと思わせる、
かなり濃密・濃厚なポートレート写真です。

おおた葉一郎のしょーと・しょーと・えっせい

には、木村氏が撮影した文士たちのポートレートが紹介されていますので
ご参考まで。

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