2014/05/10

歴史の文脈とイノベーション : (映画)モニュメンツ・メン(邦題:ミケラン ジ ェロプロジェクト)

シンガポールからの帰りの便の機内で、映画「モニュメンツ・メン(邦題:ミケランジェロプロジェクト)」を観ました。

リンク先のwikipediaには、
第二次世界大戦時にヒトラーによって重要な美術品や文化財が破壊される前に奪還を試みる連合軍の活躍が描かれる。 
と、内容が端的に説明されています。それも史実として、数百万点という膨大な数の絵画、彫刻その他の作品が救われたというのです。

数多くの偉大な芸術作品が、彼らによって破壊から守られたという事実は賞賛に値するものと思います。また全編を通して語られる「人命をかけてまで芸術作品を守る価値があるか」というテーマにも色々と考えさせられました。

一方、もしもこの大戦で、これら芸術作品の全てを消失してしまっていたとしたら、現在のアートシーンは一体どのようなものになっていたのだろうかという点が気になりました。

映画を見終わってまず思い出したのが、芸術起業論というアーティストの村上隆の著書です。家に帰ってパラパラめくってみますと、彼は芸術で評価される(高く売れる)といことについて「作品を通して世界の美術史に文脈をつくりあげること」と述べています。

つまり、芸術市場で本当の意味で評価される為には、世界における美術史の文脈をしっかりと理解していなくてはならないということです。

彼の主張を借りますと、もしナチスのこの行いが全うされていたとしたら、過去の文脈を脈々と引継いで来た現在のアートシーンそのものが、全く異なるものになっている可能性もあるわけです!

ちょっと思考が飛びますが、ナチスは「創造的破壊」を通じて美術史の文脈を書き換えることで、自国による芸術市場の新しい世界構築を狙っていたのでないでしょうか。なんて仮説も立てることができます。

それはそれで、斬新な芸術世界が構築されていたかもしれないと思うと刺激的ではあります。

しかしながら、ビジネスにおける創造的破壊は過去を否定することから始まります。

それは、取りも直さず偉大な過去があればこそ、その多くを否定することができ、更に一部を取り入れながら次世代へのイノベーションにつなげられるという事なのです。

そう考えると、やはり多くの芸術作品が残ったという事は大きな功績だったと考えるべきなのだろうなと思いました。

芸術に限らず、その分野の歴史を「過去からの文脈」として理解することは、次世代にイノベーションを起こすためのきっかけにもなりそう。

やはり学びは大事です。

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