2012/02/18

【書評・感想】車輪の下 ヘルマン・ヘッセ



小説は風呂でしか読まないと決めているので、なるべく仕事などからはかけ
離れたテーマを選ぶようにしています。
その方が気分転換にもなりますし、セレディピティな新たな発見もあるやも
しれませんし。

で先日読み終えたのは、僕にとって初めてのヘルマン・ヘッセ。
そう、この年にもなって、です。

あらすじはこちらにお任せします。


特筆すべきだと思ったのは、自然を描写した優しい言葉の数々。
本当に癒されました。僕の様な繊細な心を持っていなくても、その情景がありあり
と感じられる印象的な文章です。訳もすばらしいのでしょうね。

【帝政ドイツという時代】
この小説が発表された1905年前後のドイツ社会は、まさに1871年~1918年まで
つづいた帝政ドイツ(ドイツ帝国)時代。その時代についてはあまり把握して
いないけれど、現代の資本主義国圏にいる僕らからすれば、相当融通の効かな
い社会システムであったろうことは想像できます。
ドイツ帝国主義教育とこの小説を覆っている神学校教育のガチガチのやるせなさ
は無関係ではないでしょう。

【現代にも通じる】
そして、子供達を取り囲むそういった「やるせなさ」は、社会システムや時代が
異なっていても、ある種通じるものがあって、主人公のハンスが陥った溝の様に
、その落とし穴は現代においても至る所に口をあけているわけです。
大人は、子供に対して、ある程度の厳格さをもって接するのは必要だと思います。
だけど、そんな落とし穴を避ける脇道を、そっとつくってやらなければならないな、
と思いました。
枠の中で生き抜いていける子供もいるかもしれないけど、そうでないかもしれ
ません。
そうでないからと言って、社会からはみ出されてしまうなんてのはやるせない
じゃないですか。

「感受性」というもっとも得難い才能が備わっている子供程、繊細な心を持って
いるもの
です。枠の中を無理やり生きることで、結局自分自身を嫌いになって
しまって、自暴自棄にさせてしまうような社会であってはなりません。

まぁ、社会というか、同時に子供達を取り巻く僕らのような身近な大人の問題で
もあるわけですよね。この小説は、そんな警告も発しているように感じました。

【本に出会う時期】
また、当然なのですが、本というのは読んだ時の年齢によって、受ける影響も
異なります。もし、僕がこの本を子供の頃に読んでいたら、「親」「学校」
「先生」「勉強」といったある種、自分の周りに無条件に存在に対していた物事
に対して、きっと“疑問”を持つきっかけになった事でしょう。
自分自身、そういった事に対して、あまりにも無関心に過ごし過ぎたと改めて考え
させられます。

僕にも娘がいます。たとえ当たり前すぎると思った事でも、疑問を持つ、という事は
とてもいい事なんだよ、と教えていこうと思います。

そして、彼女の疑問について、お互いに真正面から話し合えるようになりたいもの
です。そういう意味でも、本書を娘への『とうちゃん推奨図書』の一冊に加えておく
ことにしました。

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